DeepMind GANによる90分先までの降水確率を高い精度で予測するDGMRを開発

Googleと同じAlphabetを親会社とし、深層学習によるタンパク質の構造解析世界最強の囲碁AIを開発したことでも知られる人工知能企業のDeepMindが、90分先までの降水確率を高い精度で予測できる深層生成モデル「DGMR」を開発したと発表しました。天気予報において2時間以内の気候の変化を予測するのは最も難しい問題とされており、今回のモデルの登場により天気予報の精度が大幅に改善されることが期待されています。

現代の天気予報においては、大気中の流体の動きを数値的に計算して将来の天気を予測する「数値予報」という手法が用いられています。数値予報は6時間先から約2週間後までの天気を予測することには優れていますが、2時間以内の天気を予測する場合は精度が低くなるとされています。

DeepMindの共同リーダーを務めるSuman Ravuri氏らは、2時間以内のいわゆる「短時間予報」の精度を改善しようと深層生成モデル「DGMR」の構築を実施。画像生成などに使われる敵対的生成ネットワーク(GAN)と同様のアルゴリズムに、気象レーダーで捉えた雨雲の動きを学習させ、5分~90分先の雨雲の動きを予測して生成させるよう設計しました。

Ravuri氏らはDGMRによって生成した予測結果の精度を検証するべく、既存の2つの降水確率予測モデルを用意して、それぞれの名称を伏せて56人の気象予報士に精度の評価を依頼。その結果、89%のケースでDGMRが「最も精度と有用性に優れている」と評価されたとのことです。なお、以下のうち左上は観測された実際の雲の動き、右上はDGMRです。降水の強度が高すぎることが多い移流アプローチのPySTEPS(左下)や、シミュレーション結果がぼやけることがある深層学習のUNet(右下)と異なり、DGMRは降水確率の強度と範囲のバランスが取れており、実際の観測記録にも近いことが分かります。

開発チームは「これはエキサイティングな研究分野であると考えており、私たちの研究が新しい研究の基盤として役立つことで、機械学習と環境科学の統合が促進され、天気予報における意志決定が適切にサポートされることを願っています」と述べました

Ryuda
DeepMindGAN