AIを制する国が「世界を支配」、プーチン大統領持論、ロシアのAI事情。AI兵器開発。

プーチンとは
(ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン)1952年10月7日(2021年10月現在69歳)は、ロシア連邦の政治家。大統領(在任:2012年5月7日 )。安全保障会議議長を務めている。
2020年1月15日に行った年次教書演説で大統領権限の一部を議会に移管すると共に、国家評議会の権限を強化する方針を表明し、大統領を退任する2024年以降も権力を保持するための布石とも推測された。またこの権限強化により事実上終身大統領となる事が可能になった。
2017 年
(CNN) ロシアのプーチン大統領が新学期を迎えた児童や生徒向けにこのほど行った「公開授業」で、人工知能(AI)の分野を主導する国が世界の支配者になるという持論を展開した。
公開授業はモスクワ北東部のヤロスラブリで行われ、100万人を超す児童や生徒の視聴を想定して全土でテレビ放映された。
この中でプーチン大統領は、「人工知能はロシアのみならず全人類の未来だ」「そこには絶大なチャンスがある半面、現代では予測しにくい脅威もある」と指摘した。
さらに、「誰であれ、この分野でリーダーになる者が、世界の支配者になるだろう」と述べ、この分野が一部の者のみに独占される事態は防ぐ必要があると力説。
もしロシアが人工知能開発のリーダーになった場合は「我々の技術を世界と共有する。今現在、原子力や核技術でそうしているように」と言い添えた。
2030年までに人間の知的活動と同等に(2019年)
ロシアのプーチン大統領は2019年10月、ロシアにおける2030年までのAI(人工知能)技術開発の国家戦略プランを承認した。ロシアのAI開発の戦略プランでは、同国におけるAI技術の開発の加速化、AIサービスの可能性の拡大とAI人材の育成を強調。さらに2030年までにAIを人間の知的活動と同等の機能・レベルにして行動をできるようにすること、そのための技術的なソリューションを提供することを明確な目標としている。
さらにAI国家戦略プランでは、ロシアがAI技術において世界のリーダー的存在になり、AI技術において他国に依拠しない独立性とロシアのAI技術の競争力を強化していくことが重要であると強調。ロシアは今後10年でAI技術の活用によって年間1.2%のGDP成長を目指している。プーチン大統領はAIを中心とした科学技術分野の促進において、国家と企業で連携していくことを主張。
ロシアはAI技術を強化することによって、国際競争力を高めようとしている。またAI技術は経済・産業分野だけでなく、軍事分野でも応用が可能であり、今後の軍事戦略においてもAIを活用した兵器とシステムは重要になることから、AI技術の発展は国家の経済力の強化だけでなく安全保障と国際システムのバランスの維持にも直結している。現在でもAI技術力を有するのはアメリカ、中国が中心であり、ロシアは米中に比べるとAI技術力においては遅れをとっており、ロシアとしてもAI技術力の強化は課題になっている。
ロシアはAI技術を強化することによって、国際競争力を高めようとしている。またAI技術は経済・産業分野だけでなく、軍事分野でも応用が可能であり、今後の軍事戦略においてもAIを活用した兵器とシステムは重要になることから、AI技術の発展は国家の経済力の強化だけでなく安全保障と国際システムのバランスの維持にも直結している。現在でもAI技術力を有するのはアメリカ、中国が中心であり、ロシアは米中に比べるとAI技術力においては遅れをとっており、ロシアとしてもAI技術力の強化は課題になっている。
ロシア、中国と協力してAI搭載のロボット兵器の開発へ(2021年6月)
アメリカのシンクタンクのCNAは、ロシアが中国と提携してAI(人工知能)を搭載したロボット兵器(自律型殺傷兵器)の開発を積極的に進めていると報告書「Artificial Intelligence and Autonomy in Russia」を発行した。ロシアはAIの軍事への活用を積極的に推進し、兵器の近代化を進めている。
報告書ではロシアの軍事戦略が、戦場におけるAI活用を主力にしようとしており、中国とAI技術の開発で協力していると述べており、中国はロシアにとっての重要なパートナーと位置付けている。CNAのサミュエル・ベンデット氏はロシア政府と中国政府の協力関係は軍事防衛分野の枠も超えて、民生品やアカデミック分野など様々な分野で協力していると述べている。
ロシアと中国は特に軍事でのC4ISRと呼ばれる、
指揮(Command)
統制(Control)
通信(Communication)
コンピューター(Computer)
情報(Intelligence)
監視(Surveillance)
偵察(Reconnaissance)
の分野で協力関係を強化している。
進むAIの軍事への活用と自律型殺傷兵器の開発
AI技術の発展で、AI技術の軍事分野での積極的な活用が進められている。AI技術を搭載することによって、兵器の無人化も進んでいる。兵器の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。またロシアの国防大臣のセルゲイ・ショイグ氏は「キラーロボット」と称されるAIを搭載した自律型兵器を大量生産していくと明言していることから、ロシア軍では今後自律型兵器が主流になっていくだろう。
一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。
ロシア政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。むしろこのように積極的にAI技術を軍事に活用しており、このままいけば近い将来「キラーロボット」と呼ばれる自律型殺傷兵器が登場して、戦場でも利用されるだろう。プーチン大統領もロシアにおいて軍事だけでなくあらゆる分野でのAI技術開発を積極的に推進しようとしている。
また自律型殺傷兵器(キラーロボット)による攻防が行われるようになると、人間の軍人が戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の”人間の安全保障”は確保されるようになる。戦場と戦争の在り方が変わってくる。
ロシアだけでなくアメリカ、イスラエル、中国、インドなどでもAI技術の軍事への活用は積極的に進められている。中国政府は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していない。中国とロシアの共通の敵はアメリカと西側諸国であるため、このような中露の協力関係は欧米諸国にとっては脅威であり、抑止にもなる。
ロシア軍事企業 AI搭載の70キロ先の敵地まで攻撃可能な軍事ドローン開発(2021年10月8日)
ロシアの軍事企業のクロンシュタットは「Grom(グロム)」というロシア語で雷を意味するドローンを2021年9月に発表した。中長距離ドローンとしてロシア軍に提供される予定。グロムはミサイルを搭載して敵へミサイル発射を行って攻撃するドローン。人口知能(AI)技術も搭載しており、人間の軍人が操作しなくても運航が可能。攻撃だけでなく偵察も可能。燃料補給なしに700キロの飛行が可能。そして3~70キロ先の敵地までミサイルでの攻撃が可能。ドローン自身が突っ込んでいき攻撃を行う、いわゆる「神風ドローン」ではなく、搭載したミサイルを発射するタイプ。
グロムはAIも搭載しているが、オペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、基本的には攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAIを搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う兵器は、自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製のKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。
ドローンが敵の標的を察知してから、遠隔地の人間が判断するまでに時間差があり、敵を逃がしてしまったり逆襲されたりすることもありうるので、自律型殺傷兵器のように敵を認識したら即座に攻撃を仕掛けられる方が効率が良いという意見もある。また、遠隔地にいるとはいえドローンでの攻撃の判断を行い、敵を殺害する人間にも精神的な負担がある。さらに攻撃側の軍人にとっては戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の”人間の安全保障”は確保されるようになる。
一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。